土手から落っこちてセローを残したまま撤収し後日引き上げという経験をしたので備忘録も兼ねて書き記すことに。
引き上げまでの経緯
海沿いの土手の登りで勢いつきすぎて反対側へダイブ。
無残に横たわるセロー。
結構な勢いで突っ込んだが藪がクッションになったのか大きな怪我はなかった。
落ちたはずみでタイヤとフラップガードの間に足が挟まりブーツが抜けなくなる。
無理やり引っ張り出したので傷だらけに。
もともと傷だらけだったので気にはならんが。
ごついブーツのおかげで足は無傷。ブーツも見た目以外問題なし。
ヘルメットのシールドに木の枝で引っ掻いたと思われる傷が。
シールドなしだったらと思うとゾッとする。
プロテクター付きのジャケットとグローブ、ニーシンガード、ブーツのおかげで打ち身や擦り傷程度で骨折など大きな怪我は無いようだ。
邪魔な枝や草を払いながらなんとか車体を立てる。
この斜面を一気に落ちたのかと思うと大怪我しなかったのが嘘のようだ。
人の足なら立って歩いて登れる程度の傾斜。
地面は積み重なった枯れ葉の下に赤土というバッドコンディション。
助走をつけられればギリギリ登れそうな感じだが藪に囲まれ助走つけるスペースがない。
押したり引いたり色々試すがオレの腕ではどうにもならないので一旦バイクはおいて撤収することに。
土手の上に残っていたタイヤ痕。
一瞬のことで記憶が曖昧だがスピードつけ過ぎて捲れてアクセル戻せず真っ逆さまといったところか。
最悪死んでたかと思うと流石に凹む。
土手の上に何もないのは確認したけど反対側がどうなっているかまでは確認していなかった。大怪我もせず他人を巻き込んだりもしなかったのは運が良かった。
家にはバスと電車を乗り継いで帰宅。
帰路、セローの回収方法をネットで調べる。
引き上げ方法の検討
帰宅後も色々検討した結果、後輪にロープを巻き付けてウインチ代わりにする方法で引き上げることに。
参考動画1:
参考動画2:
引き上げのために準備した道具。
- ナイロンロープ20メートル(太さ6mm、引張強度700Kg)
- カラビナ2個(使用推奨限度荷重:350Kg)
- アンカー4本(全長60cm)
- 錆びたシャベル
- 板
ロープの使用荷重は引張強度の10から5分の1程度とされているのでセローの重量を考えるとちょっと心もとないが、宙づりにするわけではないのと引き上げ方法との相性を考え細めのロープを選択。
カラビナは登山のクライミング用のものも考えたが値段と材質による特性を考慮して工事現場などで使うような鉄のカラビナにする。
クライミングで一般的に使われるアルミ製のカラビナは破断荷重を超えるような力がかかると一気に割れてしまうらしい。
カラビナ自体の重さにこだわらないなら材質は鉄製を選ぶのが無難なようだ。
ロープの支点を取るのに丁度いい木などがないのでアンカーを打って支点を取ることに。
アンカーは長いほうが安心だが長すぎると地面に打ち込めない可能性もあるので60cmのアンカーを4本打って負荷を分散することに。
土壌がゆるくてアンカーが効かない場合は穴ほって支点を作ることになりそうなのでシャベルを持っていくことに。
また、アンカーを打ち付けるハンマーの代わりにもなるだろう。
板はサイドスタンドが地面にめり込まないように敷くため。
それ用のプラスチックプレートを使っていたのだが直前のツーリング中になくしてしまった。
板とシャベル以外はホームセンターで購入。
引き上げ作業
必要なものをそろえて車で現場に戻る。
前日カバー代わりにかけておいた緑のタープが見えてちょっと安心する。
まずは支点を構築。
支点構築は以下のブログが参考になった。
落ちたセローと支点の間にロープを直線に張れるようアンカーの位置を決める。
土壌がゆるゆるなので体重をかけるだけでアンカーが埋まっていく。
フィッシャーマンズノットでループ状のロープを2本作ってアンカーにかける。
セローにつなぐメインのロープにラビットノットで二股のループを作り写真のようにアンカーとメインロープをカラビナを使ってつなぐ。
初めにアンカーを打った地点は手前すぎたので後ろ寄りに打ち直した。
こちらはある程度地面がしまっていたので最後の方はシャベルで打ち込む。
人に教えられるほどロープワークに詳しくはないのでフィッシャーマンズノットとラビットノットの結び方を知りたい人はネットで検索してください。
あまり強固ではない地面に打ったアンカーは頼りないが分散することでなんとか持ってくれるだろう。
本当は支柱の位置を高くしてロープが地面に接しないようにするべきなのだが、きっちり根本まで差し込まないとアンカーが倒れて抜けてしまいそうなので妥協する。
また、フィッシャーマンズノットよりも強固なダブルフィッシャーマンズノットでループを作りたかったのだがロープの長さが足りなくなってしまったのでこちらも妥協。
ロープの長さは計算上15mあれば足りると考え余裕をみて20mのロープを用意したのだが、結び目部分(特にラビットノット)の作成で想像以上にロープの長さを消費してしまった。
支点の構築は終わったのでロープをセローにつなぐ。
ロープを車体の右側にそってフロントフォークの内側に通しリアタイヤまで引く。
ロープをスポーク引っ掛けたあとタイヤの回転方向に注意してハブのブレーキ側に2週巻きつける。
土手の上へと伸びるロープ。
準備完了。
引き上げ作業を動画に録るため三脚を持ってくるつもりだったのだが、忘れたのでシャベルにビニールテープでスマホをくくりつけて三脚代わりにする。
ロープが切れたり支点が引っこ抜けたりするとカラビナやアンカーがすっ飛んで来る可能性もある。
不測の事態に備えてヘルメットやグローブなどプロテクター類はオフ走行時と同じ装備で引き上げることに。
エンジンをかけ半クラッチでゆっくりとロープをリアタイヤのハブに巻きつけながら登っていく。
予想以上にロープが伸びるが切れることはなさそう。
引き上げ成功。
思わずガッツーポーズしてしまった。
後始末。
リアタイヤに巻きつけたロープがハブとブレーキキャリパーの間にギチギチに挟まっている。
結局ロープはナイフで切断して取り除くことに。
ロープにキャリパーが押されてブレーキパッドがずれてしまっている。
リアブレーキをふみふみしたらある程度戻った。
キャリパー自体が歪んでしまったようにも見えるがこの場ではどうにもならない。
リアブレーキの効きが若干弱くなったように感じるが全く効かないということはないのでとりあえずヨシ。
強度を犠牲にして細いロープを使って正解だったと思う。
太いロープを使っていたら一回では登りきらなかったと思われる。
達成感にひたりたいところだが波が風に煽られて潮飛沫が飛んで来るのでさっさと撤収することに。
反省
今回の転倒から引上げについて思うところを箇条書きに
- ロープの結び目で消費する長さを考慮せずロープ長が足りなくなった
- ロープが地面と直接接触しないように養生すべきだった
- リアタイヤに巻きつけたロープがブレーキキャリパーなどに接触しないよう確認しながら引き上げるべきだった
- そもそも事故をおこさないのが重要、登った先の確認など怠らず慎重に行動すべきだった
結果的に大怪我もしなかったしいい経験にはなった。
いままではオフロード走行時にロープやカラビナなどの引き上げ用の装備は持たなかった。
なぜなら持っていても使いこなす自信がなかったから。
今後は人が歩いて登れる程度の斜面であればバイクを引き上げる自信が付いたので引き上げ用の装備を車載することにしようと思う。
オフ車の引き上げ時におすすめの道具
今回の経験から車載するようになった引き上げ作業のための道具を中心におすすめをいくつか紹介したいと思う。
リアタイヤをウインチ代わりにする方法の参考にした動画で紹介している合成繊維のロープと同等品と思われる商品。ただかなりツルツルした素材でできており伸縮性もほとんど無いのでキャンプのロープワークなどには使いづらいと思う。
いろんな業者が出品しているのでレビューなども確認しながら購入したほうが良さそう。
太さ6mmで3つ打ちのナイロンロープ。
細い割には破断強度が700kgぐらいある。
荷重がかかると結構伸びるのが引き上げでは欠点になるかもしれない。
おフランス製の鉄製カラビナ。
シャフトの太さが8mmで重さ77gなのに使用荷重が700kgもある。
ちゃんとカラビナ本体に使用荷重が書かれているのも良い。
車載するためにホームセンターで買ったカラビナがあるのにこちらに買い直した。
シャックルはカラビナに比べて重量や大きさの割に耐荷重が大きい。
特にこの鍛造シャックルは使用荷重が0.5トンなのにとってもコンパクト。
複数のロープをまとめて繋ぐような用途ではおたふく型のバウシャックルが使いやすいと思う。
コンパクトすぎて合わせて使用するロープやワイヤー次第ではサイズが合わないかも。
オフ車の引き上げを想定してクライミング用のカラビナを選ぶ場合はオーバルタイプ(楕円形)が良いと思う。
多少重くてかさばるけど一つだけ持っていくならロック機構付きが安心。
ショベル。穴を掘るだけではなくアンカー打ち込んだりも出来る。
引き上げの支点構築に使ったアンカー。
もともとはロープ張るのに使うものらしい。
バイク用のサイドスタンドパッド。
土や芝の上でサイドスタンドがめり込むような場合にこのパッドを下に敷く。
簡単な作りなので自作もできるが大した値段じゃ無いので買うのがおすすめ。
ただセローのサイドスタンドはもともと接地部分が広めに作られているのか溝にうまくはまらなかったりする。
引上げ作業中に車体を立てておきたいときなんかにも便利。
そのへんに転がっている石や木でも代用出来るけどあらかじめ準備しておいたほうが作業が捗るし時間の節約にもなる。
もっとも引上げ作業に限ればただの板のほうが使いやすいかもしれない。
コメント
凄い記事を読ませて頂きました。
格別にオフロードを走ろうとは思いませんが林道や谷津田の田んぼ沿いの道が大好きです。
先日、スズキのVストローム250の後ろにパニアケースをフルで取り付けウグイスや蛙の声のする谷津道を走ってたら山側からの泥の押出があり、渡り切れるだろうと思い入ったはいいが、ズルズルズルと滑り倒れてしまいました。 倒れたまでは良かったのですが、パニアの中には米が20K、どうも重量を換算すると250Kは有ったかと。
起こそうと試みましたが、起きずにズルズルと田んぼの方に移動するだけ。 そのうち腰も痛くなり、仕方がないのでロードサービスに来てもらい、どうにか救われました。
以上の事から、今、ツーリングセローかトリシティ155を真剣に検討をしております。
ただ、セローって。って言うかオフ車ってエンジンガードとかスライダーとかのオプションって無いんですね。
足が挟まったらどうすんだ?
って所をネットで検索していたら御ブログにたどり着きました。
とても参考になりましたし、とても感激しましたので、コメントを記して置きます。
僭越ですが、名刺代わりに自分のブログのURLを残しておきます。
http://blog.livedoor.jp/kyf01405/
250kgは傾いてたら起こせないですよね。怪我なく何よりです。
> ただ、セローって。って言うかオフ車ってエンジンガードとかスライダーとかのオプションって無いんですね。
たまーにヤフオクに出品されていたりしますがあまり需要が無いみたいですね。
自分も一時期検討しましたが車体が吹っ飛んだり一回転したりするようなコケ方する場合はあの手のガードってかえって危ないみたいなんですよね。
エンジンガードに足突っ込んでへし折られたり、スライダーが腹や太ももに刺さったり。
オフロードで転ぶとホントどうなるか想像つかないからなるべく突起物は増やさない方が良いみたいです。
実際私もリアタイヤとマッドフラップの間に足突っ込んだりしましたし(笑)。
> 足が挟まったらどうすんだ?
オフ車は比較的軽いんで成人男性なら挟まれても大概はなんとかなると思いますよ。
シート部分が細いんで結構空間が出来ますし。
ただツーリングセローの場合アドベンチャーキャリアが結構曲者で、転倒時にアドベンチャーキャリアのゴツいフレームに足を挟まれたときは抜くのに手こずりましたね。
個人的にはアドベンチャーキャリアは必要以上に重厚すぎると思うのでもう少し控えめなキャリアのほうがセローにはふさわしいと思います。
もちろん重厚な分積載性や耐荷重は上がっているのでしょうけどパニアケース利用するならあまり利点にはならないところだと思うのでなおさらですかね。
あとはソフトタイプのパニアケースとか付けておくのも転倒時の挟まれ防止と引き起こしに有効かもしれないですね。